「ITコンサルタント」という一つの職種は、もう存在しない

ITコンサルタントは、いまや職種名ではなく総称です。各社の組織はIT戦略、エンタープライズアーキテクチャ、ERP、データ・AI、サイバーセキュリティといった領域に割られていて、採用もその単位で動いています。

そして領域の選択は、入社後に扱う案件も、これまでの経歴がどこまで通用するかも、次の転職先も変えます。「ITコンサルに行くかどうか」より先に決めるべきなのは、どの領域で入るかです。

各社の組織は、すでに領域で割られている

2026年9月時点で各社が公式サイトに掲げているテクノロジー系の区分を並べると、分化の進み方が見えます。

ファーム

公式の区分

PwCコンサルティング

サービス領域は「テクノロジー&デジタル コンサルティング」。配下に「デジタル&AIトランスフォーメーション」「データアナリティクス」「サイバーセキュリティコンサルティング」「アジャイルオペレーティングモデル&デジタルプラットフォーム変革」「導入支援(SAP、SFDC、MS、Workday、Google等)」。新卒採用サイトでは CIO Advisory/Data & Analytics/Emerging Technology/Cyber Security の4チーム区分

KPMGコンサルティング

ユニット「Technology Consulting」。配下に「Enterprise Architecture Transformation」「Digital Transformation Accelerations」と、公共・エネルギー/自動車・製造/商社・TMT・小売の業界別Industry Solution

アビームコンサルティング

サービス区分は「テクノロジー戦略&マネジメント」「テクノロジー・トランスフォーメーション」。募集ポジションは「SAPテクノロジー」「エンタープライズアーキテクチャデザイン」「デジタルアーキテクト」「AI変革」「データマネジメント・ガバナンス」「ビジネスレジリエンス(セキュリティ・プライバシー)」「ServiceNow」「ITアウトソーシング戦略」「ITインフラマネジメント最適化」など領域ごとに設定

日本アイ・ビー・エム

「IBMコンサルティング事業本部」。新卒の募集職種として「戦略コンサルタント」「デジタルビジネスコンサルタント」「ITスペシャリスト」「データサイエンティスト」「デザイナー」

野村総合研究所

事業セグメントとして「コンサルティング」と「金融ITソリューション」「産業ITソリューション」「IT基盤サービス」を分離

アビームの募集ポジション名がとくに分かりやすい形です。「〈領域名〉_AI & Technology Modernization Business Unit(Solution Consultant職)」という形式で、領域が先に立ち、職種名は共通の「Solution Consultant職」になっています。同社の求人に「ITコンサルタント」という語は出てきません。

なぜここまで分かれたのか

分化には理由があります。第一に、クラウドとパッケージがエコシステム化したことです。SAP、Salesforce、ServiceNow、Workdayはそれぞれ独自の設計思想と認定体系を持ち、片方の経験がもう片方に転用しにくくなりました。第二に、データまわりが一つの職能では収まらなくなったことです。アビームが「AI変革」と「データマネジメント・ガバナンス」を別々の募集ポジションとして立てているように、モデルを作る仕事とデータの整備・統制をする仕事は、いまや採用の単位から分かれています。第三に、セキュリティが技術対応から規制対応の領域へ移り、監査や当局対応の経験が問われるようになったことです。

結果として、「ITに詳しいコンサルタント」という括りでは案件が取れなくなりました。ファームは領域ごとに人を採り、領域ごとに提案します。応募する側も、その単位に合わせる必要があります。

テクノロジー系がファーム全体のどこに位置するかを先に掴んでおきたい場合は、関連記事「コンサルティング業界の分類」も併せてご覧ください。同じ「ITコンサル」でも、総合ファーム・シンクタンク・独立系で案件の入り方が変わります。

ITコンサルの7領域と、それぞれで問われるもの

各社の公式区分を横に並べると、名称は違っても概ね次の7つに収まります。呼び方は会社ごとに異なるため、応募先を探すときはこの領域を軸にしたほうが早く行き着きます。

領域

各社での呼ばれ方の例

評価されやすい前職の経歴

IT戦略・CIOアドバイザリー

CIO Advisory(PwC・KPMG)/テクノロジー戦略&マネジメント(アビーム)

事業会社のIT企画部門、情報システム部門の管理職、ITコスト管理

エンタープライズアーキテクチャ

Enterprise Architecture Transformation・Tech Architecture Transformation(KPMG)/エンタープライズアーキテクチャデザイン(アビーム)

大規模システムのグランドデザイン、システム全体最適の経験

ERP・基幹系(SAP中心)

SAPテクノロジー・SAP Consulting(アビーム)/導入支援(PwC)

SAP等の導入・保守、業務パッケージの要件定義、会計・SCM等の業務知識

データ・AI

データアナリティクス・デジタル&AIトランスフォーメーション(PwC)/Digital Transformation Accelerations(KPMG)/AI変革・データマネジメント・ガバナンス(アビーム)

データ基盤構築、BI導入、機械学習の実装、データガバナンス

サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティコンサルティング(PwC)/ビジネスレジリエンス(アビーム)

セキュリティ運用、監査対応、インシデント対応、規制対応

プラットフォーム導入(SaaS)

ServiceNow(アビーム)/Salesforce・Workday等の導入支援(PwC)

特定SaaSの導入・運用、業務プロセス設計

ITソーシング・インフラ最適化

ITアウトソーシング戦略・ITインフラマネジメント最適化・ITコスト削減/適正化支援(アビーム)

ベンダーマネジメント、調達、インフラ運用、コスト管理

この7つに加えて、M&Aに伴うITデューデリジェンス・PMIという領域があります。アビームは「ITデューデリジェンス支援サービス」を公式に掲げていますが、この領域はコンサルティング部門よりFAS側に置かれることも多く、応募先の選択肢が他の6領域とは変わります。

領域が違えば、実質的に別の仕事になる

同じ「ITコンサル」でも、領域によって働き方も評価のされ方も変わります。

  • 案件の長さ:IT戦略やEAは数か月の構想策定が中心。ERP導入は年単位で、同じクライアントに長く入ります
  • チームでの立ち位置:戦略寄りの領域は少人数で経営層と向き合い、導入系は大規模チームの一部を担います
  • 技術との距離:セキュリティやデータ基盤は手を動かす場面が残り、CIOアドバイザリーは資料と会議が中心になります
  • 経歴の持ち運び:SAPやServiceNowの経験は同じ製品圏では強く効きますが、圏外へは持ち出しにくい。逆にEAやIT戦略は特定製品に縛られない代わりに、実績を示しにくい
  • 次の転職先:ERP・SaaS系は事業会社の導入責任者やベンダー側の上位職、IT戦略・EAは事業会社のIT企画・CIO室、データ・AIは事業会社のデータ組織へ、と出口が分かれます

どの領域で採用が動いているかは時期によって変わり、求人票の一覧には表れません。VOLVEでは、これまで担当してきた案件の中身を確認したうえで、噛み合う領域を1〜2に絞ってから応募先を決めています。要件は満たしているのに、領域の選び方で落ちることがあるためです。

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必須要件も、領域ごとに書き分けられている

KPMGコンサルティングは個別求人の要件を公開しており、領域による違いが読み取れます。「Tech Architecture Transformation」(エンタープライズアーキテクチャ領域)の必須要件は次のとおりです。

  • コンサルティングファーム、SIベンダー・パッケージベンダーまたは事業会社の情報企画・情報システム部門における3年以上の職務経験
  • ITを含むテクノロジー系の経験(システム開発経験必須)
  • 日本語:ビジネスの使用に支障のないレベル

一方「CIO Advisory」(IT戦略領域)では、これに加えて「システム導入プロジェクトにてSDLC(Systems Development Life Cycle)全般の経験」が挙げられ、業務内容も「クライアント企業のIT戦略・策定から推進までをCIO目線で遂行し、関連部門への提言や調整、コーポレートレベルの制度・ルールに関わる調整」と書かれています。同じテクノロジー系でも、片方は開発経験を、もう片方は組織の調整経験を要件に置いています。

なお歓迎要件は「業務・システム改革プロジェクト経験」「AI/IoT/Analytics等デジタルテクノロジーの企画・導入のスキル・経験」といった実務経験ベースの記述で、具体的な資格名は挙げられていません。

社名を手がかりに求人を探す場合は、直近の変更にも注意が要ります。NTTデータグループの株式会社クニエは2025年10月1日に「フォーティエンスコンサルティング株式会社」へ社名変更し、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社ほか2社は2025年12月1日に合併して「合同会社デロイト トーマツ」となりました。

選考の流れと要件の具体例は、関連記事「KPMGコンサルティングへの転職」「PwCコンサルティングへの転職」でも扱っています。両社ともテクノロジー領域の組織区分を公開しているため、領域の切り方を比べる材料になります。

需要は領域ごとに、別々の理由で動いている

「DXでITコンサルの需要が伸びている」という説明は大雑把すぎます。領域ごとに駆動している要因が違うため、持続期間も読み方も別々です。

ERP:期限が決まっている需要

ERP刷新の需要は「2027年問題」と呼ばれます。期限が来るのは、移行元である SAP Business Suite 7(ECC等)です。SAPが公表している日程は次のとおりです。

  • SAP Business Suite 7 のメインストリーム保守:2027年末まで
  • 延長保守(オプション、保守料に2%ポイントのプレミアム):2028年初から2030年末まで
  • SAP S/4HANA:2040年末までのイノベーションコミットメント

延長保守を選んでも2030年末までに移行を終える必要があるため、この需要には期限があります。一方で移行先のS/4HANAには2040年末までのコミットメントがあるので、移行が一巡したあとは、導入の案件から運用・高度化の案件へ重心が移ります。ERP領域を選ぶなら、移行のピークが過ぎた時点で自分が何を持っているかまで考えておく必要があります。

データ・AI:期限のない需要

事業会社側の人材不足は続いています。IPAの調査(1,799社対象、2026年4月〜6月)では、DX推進人材の量が「やや不足」「大幅に不足」と答えた企業が85.5%でした。自前で賄えない分が外部に出るため、この領域の案件はERPのように期限で切れる性質のものではありません。

ただし、事業会社の不足感がそのままファームの採用数になるわけではありません。データ基盤の構築が一巡した企業では、次の案件はガバナンスや運用の側に移ります。領域の中でどのフェーズの案件が動いているかは、年単位で入れ替わります。

SIer・情シスから移るときの、領域の選び方

翻訳できる領域は、たいてい1〜2に絞られる

「どの領域にも応募できる」と考えて手広く出すと、どこにも刺さりません。判断の順番は次のとおりです。

  • これまで一番長く担当した業務・製品は何か。SAP保守が5年なら入口はERP領域です。セキュリティ運用ならセキュリティ、基盤構築ならインフラ最適化かEAです
  • その経験で「決めた」ことは何か。実装だけを担当してきた場合と、方式や製品の選定に関わった場合では、通る領域が変わります
  • そこから広げたい方向はどこか。ERPから入ってEAやIT戦略へ移る道はありますが、逆は難しい。最初の領域は、5年後の選択肢の幅を決めます

選考でつまずくのは、技術面ではない

技術的な素地は、前提として評価されます。落ちる理由は、たいてい別のところにあります。

  • 「誰の課題を解いたか」を語れない:担当した工程と使った技術は説明できても、その案件でクライアントの何が変わったのかを説明できないケース。コンサルの選考では後者が問われます
  • ベンダー側の視点から抜けられない:受注した要件をどう実現するかの話に終始し、「その投資判断は妥当だったか」という視点が出てこない
  • 規模の話に寄る:何億円規模・何百人月といった数字は伝わりますが、そこで自分が何を決めたのかが見えないと評価になりません
  • 領域と経歴がずれている:導入経験しかないのにIT戦略領域へ出す、といった組み合わせ。要件の書きぶりから外れていると、書類段階で終わります
  • ケース面接・筆記への準備不足:テクノロジー系のポジションでも、ファームによってはケース面接や適性検査があります。出題の有無と形式は応募ポジションで変わるため、志望先が固まった段階でここを押さえておかないと、準備が空振りします

この翻訳は、一人で詰めきるのが難しい部分です。VOLVEでは、担当してきた案件の説明を、志望領域の要件に合わせて組み直すところまで見ています。

職務経歴の棚卸しから選考対策までの流れは関連記事「コンサル転職の選考対策・完全ガイド」に、業種ごとの経験をどう翻訳するかは「未経験からのコンサル転職【業種別攻略法】」にまとめています。

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【Q&A】ITコンサル転職に関するよくある質問

Q1. 領域はどう選べばいいですか。
まず、これまで一番長く担当した業務・製品から入れる領域を確認します。そのうえで、5年後にどこへ出たいかを考えて絞り込みます。ERP・SaaS系は入りやすい代わりに製品圏に縛られ、IT戦略・EAは持ち運びが効く代わりに未経験からは入りにくい。どちらが良いかは、今の経歴と、どこまで技術に軸足を残したいかで変わります。VOLVEでは、この2軸で候補を1〜2領域に絞ってから応募先を決めています。

Q2. コンサル未経験でも入れますか。
IT分野の実務経験があれば要件を満たす求人は存在します。KPMGの公開求人の必須要件は「コンサルティングファーム、SIベンダー・パッケージベンダーまたは事業会社の情報企画・情報システム部門における3年以上」という書き方で、コンサル経験を必須にしていません。ただし領域によって求められる経験の中身が違うため、「コンサル未経験でも可」の求人すべてに応募できるわけではありません。

Q3. どんな資格を取っておくと有利ですか。
各社の公開求人票の歓迎要件に、具体的な資格名は挙がっていません。書かれているのはすべて実務経験です。つまり、資格の有無が合否を分ける構造にはなっていません。意味があるとすれば、SAPやSalesforce、ServiceNowのベンダー認定のように、その領域の案件にアサインできることを示す資格です。ITストラテジストのような国家資格は、関心の方向を示す材料にはなりますが、それ自体が評価点になるわけではありません。資格の勉強に数か月使うより、職務経歴書で「何を決めたか」を書けるようにするほうが、通過率への効き方はずっと大きいところです。

Q4. SEからITコンサルに移ると年収は上がりますか。
上がるケースのほうが多い、というのが実際のところです。ファームの給与テーブルはSIerの水準より上に置かれていることが多く、たとえばKPMGコンサルティングが公開している新卒の標準年収は6,251,147円、ベイカレントの新卒Consultant職は600万円です。中途採用はここに経験分が乗ります。

ただし、そのまま手取りの改善になるとは限りません。KPMGの金額には「月約50時間分の固定残業手当」が含まれると明記されています。額面が上がっても、時間あたりで見ると差が縮まることはあります。また、現職の年収がすでに高い場合や、着地する職位が想定より1段下がった場合は、横ばいか微減になることもあります。

水準を決めるのは、結局どの職位で着地するかです。現年収と志望領域から想定職位を見立てておけば、オファーの見込みはかなりの精度で読めます。

Q5. コードを書かなくなるのが不安です。
領域によります。KPMGのTech Architecture Transformationのように「システム開発経験必須」と明記される領域もあれば、CIOアドバイザリーのように実装から距離のある領域もあります。手を動かす時間を残したいなら、データ基盤やセキュリティ、プラットフォーム導入系のほうが近い。この点は入社後に変えにくいので、応募先を決める段階で意識しておく価値があります。

Q6. 入社後に領域を変えられますか。
変えるというより、軸足を置いたまま半歩ずつ広げていく形が基本です。ファームで値段がつくのは領域の深さで、どの案件にも入れるが誰よりも詳しい領域はない、という状態がいちばん評価しにくくなります。

実際の広がり方は隣接方向です。ERPの導入から、その手前の構想策定やエンタープライズアーキテクチャへ。データ基盤の構築から、データガバナンスへ。案件単位で少しずつ隣に手を伸ばし、2〜3年かけて守備範囲が広がる。この積み上げが、マネージャー以上で提案を組み立てる力になります。

一方、離れた領域への転換(ERPからセキュリティなど)は、入社後の異動より転職時のほうが通りやすいのが実情です。各社とも異動の運用は公表していないため、入口の領域はしばらく自分の看板になると考えて選ぶことになります。

Q7. 総合ファームとSIerのコンサル部門は何が違いますか。
実装の受け皿を自社に持っているかどうかで、提案の性格が変わります。SIer系は自社での開発受注が視野に入りますが、ファーム側は製品中立を掲げる場合があります。ただしこれは組織の建付けの話で、実際の案件では境界が曖昧なこともあります。NRIのように、コンサルティングとITソリューションを事業セグメントとして分けている会社もあります。

まとめ

  • ITコンサルタントは職種名ではなく総称。各社の組織はIT戦略、EA、ERP、データ・AI、セキュリティ、SaaS導入、ITソーシングといった領域に割られている
  • 分化の背景は、クラウド・パッケージのエコシステム化、データ職能の細分化、セキュリティの規制対応化
  • 領域が違えば、案件の長さも技術との距離も、経歴の持ち運びやすさも、次の転職先も変わる
  • 必須要件も領域ごとに書き分けられている。EA領域は開発経験、IT戦略領域は組織の調整経験
  • 需要の駆動要因は領域ごとに別。ERPは保守期限という終わりのある需要、データ・AIは期限のない需要
  • 選考で落ちる理由は技術面ではなく、「何を決めたか」を語れないことと、領域と経歴のずれ

最初に決めるべきは、ITコンサルに行くかどうかではなく、どの領域で入るかです。VOLVEでは担当案件の中身まで確認したうえで、噛み合う領域と想定職位を決めてから選考に進んでいます。

参考文献・出典

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